放浪/高梁サトル
 

遠い
耳奥で
汽笛が鳴っている
心臓が激しく
波打って
僕は行く当てもない
切符を手に入れる

ポケットに残った
微々たる残金は
駅の構内で眠る
浮浪者の
明日の食事代の為に渡し

懐中無銭ということは
どうしてこんなに
軽やかなのだろうかと

凡庸な精神の融合が
いつしか生命を持てるのなら
この世に受けた恩恵を
少しは理解できるかもしれない

言葉にならない苦悶の想い

「疲れたかい」
「いや、まだ平気だ」
「きみがいる」
「僕とは別の世界に、確実に」

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