樹を植えた男/新守山ダダマ
私の本名には樹木の樹という字が入っている
私の父は長く長く生きてほしいという願いを込めて
私の名前に一本の樹を植えたのである
いや本当のところ詳しい理由を訊いたことはないが、たぶんそうだと思う
言うまでもなく樹は、私たち人間よりも太く長く生きる
生きて生きて私たちに多くの恵みをもたらしてくれる
私も名前の通り、樹でありたい
樹にはなれなくても樹にあやかりたい
どんなに生きづらく、希望のない状況でも、私の中には一本の樹が立っている
父が私に植えた一本の樹
これだけは忘れてはならない これだけは枯らしてはならない これだけは切ってはならない
荒れ果てた土地に 木を植えた男が
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