天は円なり、地もまた円なり/済谷川蛍
 
のかさえわからないのです。遠くからうやうやしく観察するのです。相手を呪ってしまうような瞬間が巡ってくるのが恐くて、頑なに寡黙であろうと思うのです。儚い言葉で索漠とした人生を深化させ、美しいものとの均衡を望むのですが、己の凡俗さ、矮小さを痛感し、己を蔑み、漠然たる失望感に言葉を失います。幻想の海に浸かればたちまち乾燥した砂漠に変わり、可笑しくて笑ってしまうのです」

 「貴い精神の継承者よ…神の視線は生かす…崇高なる裁断を下し給える…零れ落ちた心を再生する…典雅な憧れを伝書鳩に託し…駕籠から解放つ…心優しき者よ…親しみ溢れる新鮮な交流を憧憬し…汝は世界を粉に変え…流し込む…ときに自然が奇跡的な美を創造するように…紡がれる優美な旋律…美しい寂寥感…優雅な世界の境界…平和な情景…完全な薔薇の形…高潔な者が憚りなく進む道…喜ばしい人間…快い関係…我は汝とともにある…」

 薄い銀色の箔を押し破って舌に乗せ、群像を淡い光に照らし、知らないうちに、今日が明日へと変わる。

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