彼らの時代/済谷川蛍
 
5万くらい」
 「たかっ!」
 凛少年はメガネをかけ比べて遊んだ。
 「お兄ちゃん目悪いの?」
 「うん」
 「どれくらい?」
 「視力検査の上から3番目が見えない」
 「ヤバイじゃん!」
 「うん」
 凛少年はまた銀縁メガネをかけた。少し大人っぽくみえた。彼らが今生きている時代を知らない俺は、今の自分よりも幸福な時代であるように錯覚してしまうが、それは敗残者の夢や妄想であり、はたして彼らが本当に幸福な世代であるかは、彼らが子供の特権をすべて使い果たしたあとに、幾分か汚れてしまった瞳で見ることになるものだ。
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