進藤則夫のした仕事/八男(はちおとこ)
れたことがある。そういう所に真剣になれる希有な演出家であった。演出というより、役者の人間の立ち上がり方に徹底的に厳しくこだわる人であった。それは小学生にも容赦がなかった。どこにおまえは頑張ろうとしているんだ?もっとそこで頑張れるだろう?芝居での台詞は最小限に抑えられ、動きが主体のため、客にはわかりにくいものがあったかもしれない。芝居の最初と最後は役者全員のでんくり返しだった。
それから進藤の劇団えびすに見に行くこともあった。芝居前日は最後まで起きて飲んでいることが多かった。なぜ寝ないのか聞くと、ある役者が「疲れているほうがいい存在感が出せる」と言っていたらしい。そんないい加減なことにすぐに得心し
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