自転車に乗って/ふくだわらまんじゅうろう
 
ナイフで
ナイフで刺されて
お腹を刺されて
女の子は
もう
死んでいた
ぼくは何をしにその町に戻ってみたのか
ぼくは何をしにぐるぐる自転車で回っていたのか
ぼくは何をしに図書室で騒いでいたのか
ぼくの蹴飛ばし方がいけなかったんだ
それから皆で女の子を虐めるようになったんだ
皆で女の子を蹴飛ばして
皆で女の子の悪口を言って
皆で女の子の噂をして
皆で女の子を
嫌いになっていったんだ
ほんとは誰も
そんなことはしたくなかったんだ

世界中が
ぐるぐると回った
空も地面も
夏だった
ぐるぐると回ったけれど
ぼくは倒れなかった
倒れるわけには
いかなかった

ぼくは小学校のところまで
歩いた
あの図書室で
首をつろうと思ったからだ
だけど小学校の
門には鍵がかかっていた
昇降口にも鍵がかかっているんだろう
すべての教室に鍵がかかっていて
たぶん図書室にも
鍵がかかっているんだろう
そして今でも
いつまでも
鍵がかかっているんだろう



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