粘土/tomoaki.t
水面に映る赤褐色の肉体に 覗きこむものの顔がふやけ、千切れ、ぼやけ
(節度ある顔が汚れた声を発する)
草原で 撫でるように刈られ、
息を吐き終えた架空の草
それがはらりはらりと
水にも汚れる
(幽かな手招き)
遠く 粘土が音を立てて、一歩一歩歩いている
(私の手だって 汚れていない訳ではないのだが)
粘土は誰もの母親のようでもあり 死んでいるのか、生きているのか
どちらとも言えない人のようでもあった
草原の刈り取りは、私が幼かろうと行われて然るべきだが、
水が振り切れるように開花する頃に
音よりも光よりもはやく起こってしまって
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