ガールフレンド/済谷川蛍
よ」
これ以上の会話は彼女を苦しめるだけだと思った。明日、彼女はここを出ていかざるをえない。仕方のないことだった。きっと、あした俺が大学の集中講義から帰ってきたら、もう彼女は部屋にはいないだろう。そして、2度と会うことはないのだろう。俺は号泣してしまうだろう。でも、しょうがないことなのだと自分を説得するだろう。何度も、何度も。
六
これは今年の夏の出来ごとだから、彼女はまだ16歳だ。家に帰って普通の学生生活を営んでいるかもしれない。そうだと嬉しい。俺の家に泊まりにきたのは気まぐれで、いつもそういう生活をしているのではないのだと、そう思いたい。でもそうじゃないのかもしれない。彼女はとても賢い子だから、事件に巻き込まれるということは想像できない。あの日、俺のところから去ったのも、そういうことが関係しているのかもしれない。しかしそのことは今になってはどうでもいいことだ。彼女といっしょに暮したという証拠は、1枚のプリクラだけである。2人とも笑っている。そこに後悔はまったく映っていない。また彼女に逢いたいとも思うし、逢えなくてもいいと思っている。彼女の幸福を願う。
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