poetarot(愚者のカード)保存版/みつべえ
 
陰の椅子を置く。苔むした石の、立像のかたわら。わたしは、旅人のふりをして、事象の片隅を、行ったり来たり、しているだけ。



桜のつぼみが。明日にでも、ひらくだろう。あなたは、青空と木々のしたで、ヤンミルズ方程式と、質量ギャップ問題を解くための瞑想に入るだろう。すべての、食うための仕事をキャンセルして。だからせめて、わたしは、最寄りの自動販売機まで全力疾走して、あたたかい缶コーヒーを買ってくる。



ここは夜の、かがやく湖のような場所です。あなたの、紙の上の、足あとを辿り。ふるえる、指で、墓碑銘をなぞる。太陽ではなく、いつも 心に月を。いつも、心に、満月を。




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