かたくりこ/くろきた
”かあちゃん、ゆきを、さわりたいよ”
腕の中の子が囁く
”ゆきで、ぎゅっぎゅって、やりたいんだ”
蚊の泣くような小さな声で
お医者様に、冷たいものに触っては、駄目と言われているでしょう
頬を撫でながら諭す
”それでも、さわりたいんだよ”
この子は何を悟っているのだろうか
仕方が無いから
台所から、かたくりこを持ってきた
もう、それしかないから
”つめたいねぇ”
そうね
”ぎゅっぎゅって、するねぇ”
そうね
”ゆきは、とてもサラサラ、しているねぇ”
そうね
この子の目は
もう、みえていない
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