割れない卵/亜樹
のおやつを食べてから、することがないのでただぼうっとしている。昔はそんなときは本を読んでいたのだけれど、最近は視力がひどく落ちて、活字を読むのが辛い。一日に何度も目薬をさす。眼鏡をかけてもあわない焦点に、また頭が痛くなる。
休みの日に何してるの?、と聞かれると困る。
何もしてない。
一日の半分以上は寝てる。
眠たいわけではなくて、他にすることがないから寝てる。
それでも時々、どうしても眠れない日がある。そんな日はゆで卵を作る。
冷蔵庫の中からあるだけの卵を出して――といっても、多くて五個だ――固めのゆで卵を作る。
煮沸する湯の中で、ぐらぐらと煮て、時々掻き混ぜる。卵の殻がこつこつと鳴る。
湯だったそれを冷水にかける。そうしてできた細かなヒビに、爪をかける。
ぽろぽろと落ちる白い欠片を見ていると、なんとなく眠たくなる。
固い殻を剥いでも、その中にあるのはしっかりと弾力をもった、卵である。
そのことに安堵する。中身はまだ守られている。
産まれない雛たちの安全を確認してから、私はまた布団にもぐりこむ。
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