FREE HUGS・?/高梁サトル
 
しまうだろう。
通りは大勢の人で賑わっているのに、少し建物の隙間から路地裏に視線を移せば、そこは水をうったように静まり返っている。
思索に耽ることを許す静寂を孕んだ空気こそが、この街に惹きつけられる魅力なのかもしれない。
今までかたく結ばれていた涙腺がゆるんでいくのを感じて、慌てて眉間を手の甲で押さえた。

数十分歩いて、ようやくマルクト広場に着いた。
休憩する為に、広場に面した小さなカフェの窓際の席に座り紅茶とワッフルを頼む。
椅子の背に体重を預けて広場の中央にそびえる鐘楼を見上げると、ふと今晩の宿をとっていないことに気が付いた。
駅に引き返すべきだろうかと考える姿が不安げに映っ
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