FREE HUGS・?/高梁サトル
た表情を見せた。
「きみは他人をなかなか信用しない疑り深い性格だね、弱点ひとつ発見。」
不躾ともとれる言葉がなぜかくすぐったくこころに響いて、思わず笑い声が零れた。
ゆるやかに滔々と流れるセーヌ川は、川辺で繰り広げられる数え切れないほどの会話や想いをすべて内包して、海へと流れ込んでゆく。
私たちは水面をゆく、バトームーシュに手を振った。
大勢の観光客たちで賑わう船内の声が、こちらまで伝わってきそうだ。
いろんな人間がいる。
これから少しの間こんな生活を送るのだと思うと、少々愉快な気持ちになった。
宿屋に戻ってベッドの上で久しぶりに背筋を伸ばしてごろごろしていると、ふいに日本にいる友人に手紙を書きたくなった。
フロントで無料のポストカードをもらってきたが、何か書こうとした途端うまい言葉が思いつかない。
私はペンを握ったまま、深い眠りに就いた。
“Dear.×××
How are you? I am delighted to announce that....... .. .”
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