FREE HUGS・?/高梁サトル
アパレル会社を経営している。
私が田舎から都内の大学に進学して以降、兄貴分として色々と甲斐甲斐しくお世話してくれている人だ。
女好きする顔立ちのやさ男で、スポーツ万能、よく学生時代は湘南にサーフィンをしに連れて行ってもらった。
6つも年上だというのに、まったく老いを感じさせない。
おもむろに机の上に置かれた2つの携帯の片方が、時々震えている。
鳴っていることを伝えても、「ああ」と笑うだけで中身をチェックしようとはしない。
兄さんは近頃2つ年上の奥さんのことを“家政婦”と表現するようになった。
何度目の浮気だろう。
私はアイスティーのグラスにガムシロップを注ぎながら、着信相手の名前を
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