殉職した野球人に捧ぐ /服部 剛
 
める。 
彼が守っていたセカンドで円陣を組む。 

「 たくやーーー・・・ 
  皆、いくぞ・・・! 」 

「 おぉ・・・! 」 

涙を頬に流して仰いだ天に向かって 
彼の名を呼ぶ原監督を中心に、 
ナインは心を一つに、叫んだ。 

その夜の試合で 
ナインは喪章を袖につけ 
ある者は、生前の彼のように、全力で走り 
ある者は、白球に向かって飛び込み 
ある者は、球場に虹を架けるホームランを放ち 
たった一つの勝利を、彼に捧げた 

グランドに残された誰もが 
突然逝ってしまった彼の魂と一緒に 
闘っていた。   

妻にジャイアンツのユニフォームを着せられた 
彼は今も棺に横たわり、眠っている 
原監督が命日のウィニングボールを
持って来るのを、待ちながら 










戻る   Point(5)