殉職した野球人に捧ぐ /服部 剛
試合前の練習中
選手たちにノックしようとしたら
突然彼は胸を抑え、
バットを握ったまま
グランドに倒れた
担架に寝かされ、救急車で運ばれた彼を
原監督が、チームメートが、ファンが
愛する妻が、幼い子供が
故郷から来た両親が
病室のベッドの傍らで
奇跡の回復を、願った
( 彼は四日の間、静かに瞳を閉じて
眠り続けていた・・・ )
四月七日・午前三時二二分
彼は大切なグラブとバットを
グランドに置いたまま
天国へ旅立った
皆の胸に
あどけない笑顔だけを、残して
原監督がナインを試合前のグランドに、集める
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