誰かの手紙/番田
もが口を揃えて思うものだけれど、いつかはやってくるのかも知れないと思っているわけだけれど。でも違うのかもしれない…。
彼女は複雑な道案内をしてくれた。感謝しながら石畳を歩いてホテルに着くとぼろぼろの外装の割には美しい大理石の内装だった。誰に何を語ることもないままで僕を僕にわからせられたなら。ふふ。何にも思いのないままで考え込まされているこの体。電車に乗っていると日本から地球を半周するぐらいに離れていたのだけれどそれはどこか日本のどこかを感じさせる窓の風景かもしれぬ。それはそう、ここは観光地だったなと思い出すと、飛行機の中だけがひどく寒くて渡航地に降り立ってホテルを探してずぅっと徘徊していた。メトロの同じ電車に乗っている人の金色の髪をしていて、青い瞳をしていたりしていて、そして駅のホームではこの国の言葉を話せなければだめよと言って、太ったおばさんにひどく注意されて。
戻る 編 削 Point(1)