家なきひと/恋月 ぴの
 
からこそ言葉なんてものに縋ろうとしてるんだしね

あれ、こんなとこまで桜の花びら舞ってきた

今年の桜、雨にも負けず風にも負けず
そんな感じで咲いていて

ソメイヨシノの美しさって歌舞伎のそれと似ている
どんなに咲き誇ったとしても生殖とは無縁だし
人生散ってしまえば全ては無に帰してしまうのだから
無駄なあがきはよせと諭されてるようで

仲良くするって難しいのかな

汗臭い腕のなか、私の帰る場所なのか確かめたくなって
男物の鼻緒もどかしく桜色した光のなかであの人の姿を探す



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