腕とナイフ/Oz
 
ハロルドはそのナイフで色んなモノを
裂いた
木の幹
近所の鶏
ナターシャの膿
リンゴ
タイヤ


そこには
善意も
悪意も無く
ただ衝動だけがあった
しかし
ハロルドは
善意も
悪意も
感じる人間だ
行為後には
自己の呵責に
苛まれるのだった

そのナイフは
父の形見だった
だから
手放すことは出来ず
悪いのは自分だと
自分こそが悪いのだと
そう思わざるをえなかった

ある日
ハロルドは
ナターシャの首筋の綺麗さに
惹かれてしまった
そして
それを裂きたい衝動を感じた

ハロルドは
限界を感じた
物事の終息の必要性を感
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