三国橋の上で/都志雄
 
橋の上、
時計回りに見渡せば
下野(しもつけ)、下総(しもふさ)、武蔵国(むさしのくに)

いつからか都の殿上人たちはこの地にも境を引いて
左扇で国獲り遊戯
その頃すでに古河(こが)の渡りは扇の要

やがて平将門の颯吹き、
その後は公方が夢の跡
今じゃ譜代の城も無し
それよりあの娘、いま頃は…


麻久良我(まくらが)の許我(こが)の渡りのから梶の音高しもな寝なへ児故(こゆゑ)に ※

逢はずして行かば惜しけむ麻久良我(まくらが)の許我漕(こがこ)ぐ舟に君も逢はぬかも ※



渡しの船が船橋に

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