白日/かのこ
失った視力はもう取り戻せない
そのことにまだ気付いていない僕ら
不必要なわけではないけれど
そう必要でもなかった
それだから失った
矛盾は何もないはず
ふと理由もなく失望する日は
誰かが歌にしたような白日
ふたつ光を重ねてとらえた景色
そこに揺らめく影は見覚えのある
懐かしい人、僕に手を振る
痛みの光景はもう不確か
膨らませた肺に取り込んだ
使いまわしの酸素とドライ
忘れたはずの匂いが呼び起こす
抱きしめられたかったんだ
信じられるものはまだ機能している五感
息をして匂いを感じる、とらえた景色を焼き付ける
もう手放したくはないよ
忘れる前に思い出にならないで
それだから失った
矛盾は何もないはず
ふと理由もなく失望する日は
誰かが歌にしたような白日
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