ゴンザレスの丘/月乃助
 
に風を孕ませては
眠ったような小さな岬の少し前を、あきれるほどゆっくりと進んでいく
(私は、静かに目を閉じたまま、そのありさまを眺めてる)
動きをやめた山脈が光りに浮き 雪化粧のまぶしさを誇らしげに
エニシダの黄色い花さえもう、足元に広がりながら
豆のにおいをさせては、海鳥達を誘っている
力を抜くと 雲ひとつない空が落ちてきてしまう
平和を揶揄する機会を待ち望んでいるように
ついさっきまで、私は海鳥達と一緒に飛び回っていたのに
今はどうしてもその姿を消して
民家の屋根の影へと隠れているのか
人の営みなど少しも感じさせない
唯物的な街は、それでも生きもののように
動きをやめてしまった大きな獣のしぐさで
春の日に、時間さえもほんの少しばかり
早く進みながら、鋭い時を
身にまとっている





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