ラヴソング/蒲生万寿
 
ドブネズミが

行き倒れた乞食の指を喰い千切る

ヤマトタケルを祀る社で

知恵遅れの男と女が性器をまさぐる

それを見ながら自慰をする老人達

七色の穢れた色彩が惨い熱を放出し

うんざりする程に溢れ返る夕暮れ

淀んだ空気に

イカレた臭気の漂う堕ちた場所でも

樅の木はすっくと天へ向かう

ビルが覆い被さろうとも

そんなものは地に落ちた影同然

こんなラヴソング

人には届かぬ声で

カラスは今日も歌い告ぐ

大空に歌い告ぐ

戻る   Point(0)