悪名 / ****'04/小野 一縷
土色に枯れた千の蛾が部屋を覆い尽くす
それに 白粉の殺虫剤を 噴きかける
ぽそぽそと 大小の蛾が 落葉になって
床に重なると 兄さんが 粉で真白の瞼を擦って
真赤な涙を垂らしながら言う
「一体、なにがあったの?」
「別に、虫が多いだけだよ。」と応える
ばふん 粉っぽい布団に 兄さんは再び横たわる
枯れた紙幣のように 蛾の死体が数枚舞う
・・・ずっと、おやすみ・・・
膵臓が白子の眼球を一個 孕んだようだ
だから粘っこく重苦しい吐気がする
俯くと
耳の上を両側から万力で締めつける拷問が始まる
はっ と気付く が 夢じゃない
と 赤く錆びた咳が 結核のふりをする
[次のページ]
戻る 編 削 Point(7)