ワカメ/ふくだわらまんじゅうろう
おいしいワカメが食べたい
ほんとうにおいしいワカメを食べられたら
もう
死んでもいいくらい
ワカメのほんとうの味を
誰も知らない
それは海の力を吸い込んだ
太陽と
潮風と
しあわせと
波にたゆたう己の
哀しさと
緑と
茎と
命の
滑稽なハーモニー
雌雄の交わる
真剣で
耽美な
悪戯と
己の哀しい
無秩序と
山々の荒くれと
海の悲しみと
どこへも辿り着けない風たちと
誰もが背負う深い孤独と
悟りなき種族たちの糞尿と
雨と
嵐と
少しの真珠と
塩と
光と
光の冗談と
和牛に騙される蛮族の系譜と
味覚なき世代の未来の灰と
一握り
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