非常口 /
服部 剛
この世という巨きな檻で
誰もがひとつの「非常口」を探している
それぞれの足首に鎖でつながれた
鉛の玉を、引き摺りながら
背後から迫る炎の手の、一歩先を
脇目も振らずまっしぐらに
駆ける人よ
暗闇の遠くに見える
「ひかりの扉」の向こうから
地上の天の面影で、一輪すっと立っている
花のまぼろしは
ゆっくりと唇を開いて
生まれる前の約束を、囁くように
世界に一人の
あなたの名前を、呼んでいる
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