彼岸の花 /
服部 剛
長い間、咲かなかった
植木鉢のクンシランが数年ぶりに
草の両腕をひろげ
橙色の花々を、開き始めた。
レースのカーテン越しに注がれる
日のひかりの内に、今はもういない
在りし日の婆ちゃんの
無邪気な明るい姿が、甦る。
今日はお彼岸なので
千葉から来る叔母夫婦と
初老の両親と僕でお萩を食べ
散歩がてらに寺まで歩き
婆ちゃんの墓前にしゃがんで
内緒の呟きを
打ち明けるように
そっと両手を、あわせよう。
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