going to the moon/チアーヌ
 
ど市の人間たちは誰もその子に目を留めず、男の子も傀儡師の操る人形芝居の前で物珍しげに立ち止まったりなどしながら、ひとりきりで歩いているのでした。
 そのうち男の子は市を出てしまいました。辺りはだんだん暗くなっており、壊れた築土塀の間から犬や牛が出入りしているような廃邸や、いかにも物怪が出そうな、蔦葛に巻かれてしまった門柱の側を通り過ぎた頃、男の子はさすがに疲れてしまったのか溜め息をつきながら立ち止まりました。
「お母さまは、一体どこにいらっしゃるのかな」
 男の子は独り言をいい、そして再び歩き出しました。 
 男の子が次に立ち止まったのは、二条の辺りでした。この辺りの雰囲気はさっきとは全く
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