going to the moon/チアーヌ
京の都、土御門大路を、八つか九つかくらいの男の子が辺りを見回しながら歩いておりました。
そのうち男の子は、市の雑踏へと入り込みました。
烏帽子に水干姿の男やら、市女笠に垂布の若い女、上総か常陸あたりから出て来たと思われる田舎者風の従者たち、それに片手の無い物乞いやら傀儡師のたぐい.....もう夕暮れに近くなっても人ごみは続いており、男の子はそれらを眺めながら市を通り過ぎました。
男の子は童直衣姿で、色白で涼やかな目をしておりました。貴人の子にしか見えないこんな子が、供も連れずに市をうろうろしているなど、ありえないことです。普通ならばすぐに人さらいにあってしまうはずです。
けれど市
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