遭難/古月
逃した魚が尾ひれを揺らしながら
泡のような歌を唄うから
僕とお母さんは今夜もふたりきり
空っぽのお皿を囲んでいる
待ちくたびれた夢の中で僕は
とても大きな魚を釣った
お父さんの乗った船が氷山にぶつかって
いまだに体が見つからないまま一年
数字になったお父さんの
初めての誕生日がやってくる
テープレコーダーから流れてくるのは
僕が生まれた日のハッピーバースデー
ロウソクの火を吹き消したら
今度は僕が唄ってあげるね
ハッピーバースデー
目が覚めるとお父さんが帰っていて
大きな魚が釣れたよって自慢げに
両手をいっぱいに広げて見せ
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