日本むかし話 妖怪糠肉擬/salco
張りついて来るのじゃな。
甘えたいんじゃろうか、好かれたいんじゃろうか。謎じゃよ。
それで
「ボクチ、ボクチ、トクチ、ヌクチ、ペクチ、モクチ」
と呟くのじゃ。
「何を言いたいのだ、気味が悪いからあっちへ行け」
と言うても、
まるで言い訳のようにでろーん、ぺろーんと体を左右に動かして
聞く耳もあらばこそじゃな、まあ妖怪だから仕方がない。
ついにけったくそ悪うなって、突いても蹴飛ばしても一向にこたえん。
実に不思議な体をしていての、布のりや糠のようにでろでろしておる
から、突いた手は濡れるし蹴った足は重たくなるしで埒があかない。
それで庄屋の幸という、雛菊のように可憐な娘が
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