大学生活2ー医大のこと/番田
ているのかもしれない、彼女は押し黙ったまま溢れる言葉を紙に書き付けている。蝉の声が遠くから響いて来るのがはっきりと聞こえたので彼女に「蝉だね」と言うと、彼女は「え?」と言い気づいていないようだった。
車が走り去るとまたいつもの鈴虫の音が響いていた。夜も遅かったのでそばの国道を通り過ぎていく車の一台一台の音がはっきりと聞き取れた。彼女もそうだったろう、汗がテーブルに染みついて天井の蛍光灯の光がそこにゆがんでいた。夏の日の真夜中で窓の外から虫たちの鳴き声が微かに響いていた。その夜も僕らは分厚い教科書や参考資料などを広げて顔をつき合わせてノートに書き出していた。手を動かしていた方がタイプしているよ
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