許してやれ/西天 龍
「許してやれ」
その声に振り向いたとき
体が溶け始めた
「誰を? 何を?」
その声に問いかけたら
自分が溢れ出し
全てが流れ去った
「許してやれ」
再び響くその声は
天からのようでもあり
背後から耳元にささやくようでもあり
ただ、なぜかとても優しくて
溶け去った自分のいた空間で
皆と生きたいという願いが生まれた
心の不器用さ
小脇に抱えた自分自身の泣き言
偏狭、頑迷
すべてが厚い氷となって
心を閉ざしていた
誰か、何かはわからないけれど
許してあげる
そう、その声に語りかける
自分のいた空間に
もう一度、皆と生きる自分を作るために
皆と生きることができる
自分を作るために
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