夏のおわり/イシダユーリ
夜、真っ暗な中、なにもないような山間の道をえんえんと走った。連れと、ここを二人で走ったら、どんな二人でも、恋に落ちるかもね、と話した。人生について語らなきゃいけない気がするからね、と言った。そして、いま、この時間にも、様々な都市で、音楽や芝居、ダンス、映画、そういうものが何億と行われているかと思うと、とても不思議な気持ちになった。ただ、生活していればいいのに、どうして、表現やら芸術やら、そういうものを語ったり、やったり、するのだろうな。この、飢えみたいなものはなんだろうね。わたしは、ずっと、ただ振動、ただ運動、ただ震え、ただ痙攣、ただ、ただ、そういうものになりたかった。そういうものになれるときやも
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