祈り/北野つづみ
四ツに割ったリンゴを
庭の木の枝に刺しておく
この冬を越せますように
ヒヨドリたち
どうか無事に越せますように
海峡を越えていく鳥もあるという
敵に襲われぬよう波のうえ低く
群れなして
その海を越えていけますように
どうか無事に越えていけますように
悲しいことばかり
辛いことばかり
けれど今朝もぬるい陽が翼を暖める
ので
芥子粒のようにきらめく
それはただの石英で
ダイヤモンドではないけれど
日々は
祈りで始まって祈りで終わる
凍った指に息を吹きかけて
空の部屋を暖めて
オブラートに包んで飲み下す
その冬を越えてゆく
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