無言の口論/りこ
 
なまぬるいお湯の中
しわくちゃになった書物を
指先を付け合せてすくいとる仕草で
かき集めます

誰かが告げた
さようなら
ひとすくいで用件を済ませば
ばらついた指先からこぼれだして
無言の口論だけが続いていく

それでも私は諦められなくて
言葉という言葉を拾い集めるのだけれど
私の筆は何も覚えられずに
いつまでも立ち尽くしたまま

どうせなら牛乳にでも浸して食べちゃえば良いのに
この書物も筆も言葉も
食べちゃえば良いのに

同じ胃袋の中で削ぎ合っている両性は
紛れも無い
私の
家族
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