アンチヒロインの思い出/salco
 
えやっかみ半分の立ち話をしたものだ。

さてある日引越し業者の四tトラックが横付けされ、家具類や衣装ケー
スなどが次々にその白い直方体に運び入れられる。
ばあさんの方は割烹着姿で甲斐甲斐しく小屋を掃除しカーテンなど吊っ
ている。
やがてタービンが回り出し煙突の先端から強い陽炎が揺らめきながら天
へ昇る。
そう、ばあさんは極めて燃焼温度の高い業務用焼却炉を新築したのであ
り、試運転を兼ねた老後の身じまいとしてまず己が人生の夥しいガラク
タと襤褸、それと保存に値しない若干の思い出を処分したわけである。
そして営々と払い続けて来た国民年金の実にお寒い支給額を補う為に役
所で恐るべ
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