君のいる風景(4)/まどろむ海月
 





深まる夕闇の中で
水底まで透きとおった
滑らかな黒の湖水に
斜めにさし通した櫂から
膨らむ波紋 滴る雫が
清澄の音階に流れつづけ・・

静かに進む二人きりの小舟

君の影が波璃に映った
伝説の少女の白い指ように






ああ 満天の星空が
湖底から宇宙の果てまでも

巨きな夜の水晶球の真中で
身を寄せて見た

大気の中を流れゆく 時

さやかに燦めく風を






天頂から 湖面に
星が 真っ直ぐに墜ちて
広がる黒い波紋
訪れた眠り・・

夜の山気の中を
いつまでも漂っていた
僕たちの小舟






まだ薄暗い 朝もやの中
小舟に乗った二人 やがて

限り無く透明な夜を沈ませた空の底から
なおも瞬く幾つかの星

清浄の大気の中
沸き起こり移りゆく雲を
ばら色に染める曙の光

そして目前に
燦然と輝く湖面


一日の誕生















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