Babylon/高梁サトル
{引用=
冷たいコールタールに沈んで
薄い唇を堅く閉ざせば
沈黙が真実さえも無に返して
上辺を撫でる風には奪うことができない
追憶の時間を抱き締めている
強張らせた体が化石になって
何万年の間黒い涙を流し続けたら
硬い鱗も剥がれおちて
別の何かに生れ変われるかもなんて
国境が消えるほど地球儀を撫でた
指先を取り込んだ瞳の奥深くで
生まれては消えていく卵子が
朝と夜の訪れを交互に待っている
失われた大地の前で立ち尽くす
有意義なほろびなんてないその先で
悦びを謳うあれはきっと
私の何かでもあるはずなのよ
どんなに隙間だらけの体だとしても
(私を私
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