物語/蒲生万寿
 
その壁に

額を打ち付け泣き叫ぶ狂人

夢をくれ

言葉をくれ

明日の変わりに昨日をくれ

したたり落ちる血が花を染める

その果実を喰らえば

望み通りの扉は開く

後ろを向いて静かに入れ

言われる迄も無く

狂人は靴を放り投げる

ペテン師奴!

俺が本当に欲しいのは その影だ

鳥の羽をあしらった俺の影だ

どれだけ命を差し出せば

そいつを手に入れられるか

今日の分では足りないか

命など要らぬ

水を飲み腹から唄えば好きに出来る

しかしお前一人じゃ無理な話しだ

[次のページ]
戻る   Point(0)