渋谷へゆこう/天野茂典
恋を失って12年
それでもだれか
こころのなかで
慕っているものがいたか
どうだかわすれてしまった
『わがノルマンデイ』* もない
それでも人は生きてゆかれる
砂を噛むような人生
白紙のままのノート
書き込めなかった歳月
機械化してしまった
感情の潤滑油
人が恋しい
年をとるほどに
男のぼくは
女が好きになってくる
同じ人間なのに
性のちがいで
からだがちがう
そのからだが好きになってくる
ますますエロくなってゆくのだ
女性の器官に興味がわいてゆく
ど
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