鬼火/しべ
わたしは
冷たい座席に沈み込む帰途を選んだ
柩のような匂いが
鼻腔を撫でるもんだから
からからだ
青黒い窓を見つめると
スポーツカーをきいきい啄む
鴉の檻から搾り出た森が
今宵もまた
恐ろしい
風も
びゅーびゅー吹いている
.
利根川を境に
影絵のような道路がちぎれとんだ
崩れた月が
跳ね廻る星たちといっしょに
唸る白炎に挟まれ
腹の下を泳ぐ
遠くで高圧鉄塔の、痩身の
骨から骨へ走る電流が
花火のように
弾け飛ぶ
万能の光で煌めく道を
オレンジ色の橋を
その先の工場の街を
朝まで焼き付ける
巨大な煙突達に顔は無いが
炎だけはものすごい
一体全体
かれらは何を作ったのか
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