サから始まる語義凡例・サ〜シ/salco
 
があの瞬間、広島・長崎上空だった。
 それは決して呼ばわることのない、心を持たぬ神であり、絶滅の、沈黙の君臨であ
 って、我々衆生としては科学誌の表紙に刷られる終末時計のように、ただ固唾を飲
 んでカウントダウンに臨むしかないのだ。何故なら神はその破壊力よりも、放射能
 半減期の威力に於いて我々創造主の手に負えない。

 それでも順延の試みは僅かな余地として残されてある。存続に終止符を打ちたくな
 ければ、この現状を永世に亘って維持するしかない。
 その方法論とは言語であり、これが我々人類の宿業であると共に唯一残された希望
 でもある。舌先で打ち出され、儚く消える音節の意味合いの
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