アホウドリの島/楽恵
ことのない大きな白い鳥
鳥は翼を広げたまま、風に乗るようにして
俺の頭上を何度も行ったり来たりした
その度、海面に灰色の影が落ちた
鳥は頭の部分が黄色い羽で覆われ
くちばしだけが鮮やかなピンク色だった
よく見ると、翼だけは黒かった
広げた翼の長さが2メートル近くあった
俺は海の上をどんどん漂流していったが
鳥は何故か、俺のそばを離れなかった
そして空を見あげるたび、その大きな白い鳥と目が合った
鳥は空から俺を観察しているようだった
無性に腹が立った
(馬鹿にしやがって)
こちらは今まさに死にかけているのに
鳥は瀕死の俺の状況を楽しんでいるように見えた
し
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