アホウドリの島/楽恵
 
気がつくと、俺は漂流していた
大洋のど真ん中に、俺ひとりだった
広い海は恐ろしいほど青く、そして黒かった

小さな板切れに横たわっていた
頼りなく波間に揺られながら
自分が置かれている状況に呆然としていた
目を凝らしてあたりを見回しても、船影はまったく見当たらなかった
幸い風は弱く、波は穏やかだった
喉がヒリヒリと渇いて痛かった
(死ぬかもしれない)
体力も随分と消耗している

その時、俺の身体を覆うほど大きな影が、俺の頭上を突然横切った
(飛行機か)
影の正体を、必死になって探した
それは飛行機ではなかった
鳥だった
翼を広げた大きな一羽の鳥だった
見たこと
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