毒婦の系譜/salco
 
ろ、この
35歳女のあまりにも空っぽな価値観には戦慄を覚えるのだ。

阿部定の犯罪が美しいのは、性豪旦那(雇用主)への愛着のあまりディ
ルドにもならぬスーヴェニアを切除した、その愚かしくもいじらしい情
緒の普遍性ゆえである。社会的には無学な労働者階級の日蔭者であり、
父権制度の徒花的ニンフォマニアに過ぎない彼女は、愛憎こもごもの男
根切断願望が常に潜在する女にとって非常に理解しやすく、社会的には
何とか男に伍し得るという一時的錯覚が許され、一方ではインターネッ
トという公共性と匿名性が抱き合わせになった密室で性交暴露が氾濫す
る現代に於いては、先駆的でさえあった。
同じく欲望
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