正午には、まだ/エズミ
 
八月、蝉が鳴く。
斜面の高いところで、
楠がこんもりと枝を張って
身をゆする。
むいたばかりの
ゆで卵みたいな青空の表面へ、
陽射しをはじきかえしている。
降りそそぐ、
眩しい小さなつぶてが
葉っぱの一枚一枚にはぜて、
ぱちん、ぱちんと
音をたてていやしないか。
驟雨のような蝉の声で塞がれた
耳の奥のほう、どこかで
空がひろがる。
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