栞/相羽 柚希
 
春の便りは未だ届かないのでしょう
もう通わない通学路
バスからの景色は結露に滲んで消えそうで
改札は湿り気の強い泥だらけですもの

誰も居ないキャンパス
いつもより広く見えた
喫煙禁止エリア
真新しい学食の前
タバコに火を点し
思い出を煙に巻く

もう通わない通学路
いつも読んでいた本に挟む栞

煙に幻を見て
溢れた涙は雪に溶け
風に運ばれた花粉に
くしゅんと、くしゃみ

春の便りは未だ届かないのでしょうか
いつも読んでいた本に挟む栞
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