結婚記念日 /服部 剛
 
一日のつとめを終えた 
きゅうすと、湯呑みがふたつ 
流しの隅の入れ物に 
ひっそりと、身を横たえている。 

時計の針は〇時を廻り 
初老の夫婦はあどけない寝顔で 
薄っすら口を開けながら 
出逢った頃の、夢を見ている。 

思えば数え切れない程のお茶を飲み 
他愛のない日々の会話を繰り返しながら 
様々な天気模様の空の下 
長い長い道のりを、歩んで来た。 

今日は四十二回目の、結婚記念日。 
出来の悪い息子は、お祝いの詩をひとつ 
深夜の食卓に、置いた。 




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