翳りゆく線路/within
 
もうすぐ
何も書けなくなるかもしれない
春の暁を迎えることもなく
散っていく
桜の木の下で眠る
モンシロチョウの卵のように
冬に埋もれて
全てを白灰に戻し
あなたのことを忘れ
木偶(でく)のように
呼吸をするだけの
狂人になるかもしれない

どんなに思いを
言葉に込めても
受け取ってもらえなかった
破片たちが
眠るぼくの上に
牡丹雪のように
柔らかく降り積もる

ぼくはいつか狂人となり
あなたの目が届かない
冷たい城に幽閉され
ただ生きている
それだけの
一匹の家畜になる

会うことも
叶わなかったけれども
あなたの楽しそうな笑い声が
ぼくの耳元で
木漏れ日のように
小さく微笑んでくれる

徐々に狂って
死んでいく者の絶望

薄暮の線路

ひとり暗黒の城に
連れられてゆく

悲しいけれど
ぼくの生は
こんなもの

しかたがない
人間に生まれてきたのだから
どうしようもない

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